ウィーンからの贈り物

誰もがみんなプリマドンナ

文/写真  桂  ユリカ


  ウィーンの冬はこんなに長かったのだろ う か ? と 思 う く ら い 今 年 は マ イ ナ ス 気 温 が 毎日のように続いてい ます。新年も過ぎたこの 季節はクリスマス市が出 ているわけでもなく、つ いつい家に閉じこもって しまいがち。ついTVに 釘 付けになっていると、 オーストリアのCMの長 さ に 気 づ く 。 C M の 間 ボ ー ッ と し て い る と 思 わ ず 居 眠 り … 冬 眠 っ て いう動物的本能の影響で しょうか?

  それにして も オ ー ス ト リ ア っ て 携 帯 電 話 の C M が 多 い 。T-Mobil、One、Tele-Ring とかバンバ ン宣伝して、いつだったか日本人がタクシー 運転手役でCMに出てました。トレビの泉で 携帯投げた日本人っていうのもいました。日 本人役を頼まれた彼ら曰く「ギャラが良いの で病み付きになってしまう」と。益々アジア 人人気というか、閉鎖的なウィーンでもいま やインターナショナルの波は抑えられなくな ってきているのでしょう。

  ここでは時々エキストラの仕事が舞い込 む事があります。CMだけではなく、時に はドラマのちょい役に日本人が必要という 事でキャスティングが行われ、これがきっ かけとなりタレントの道が開けた人もいる くらいです。

  この私もフォルクス劇場の『ジュリアン と神々達』というお芝居に日本人ツーリス ト役で出演させてもらった事がありまし た。台詞入りでリハーサルも三日程あり ました。この時も不思議と日本人のギャ ラは他国のタレントさんよりも良かった ようです。しかしながらこの舞台の時に 日本人男性もという事でオーディション を受けた二人の純日本人男性は、顔がく どいという理由で落とされました。他の 舞台でも韓国人の方が日本人っぽいとか で、日本人役で採用されたり、舞台裏に はいろいろな思惑が隠されているようで す。日本人らしさって一体…と自らに問 いかけたものでした。

  さて、携帯電話の Tele-Ring のCMに 見覚えのある紳士が!!前々回 Opernball (オペラ座舞踏会)の話題に触れた時に トーマス・シェーファー・エルマイヤー 氏のことをご紹介しましたが、あの颯爽 とした紳士が最近ひょうきんな一面を見 せてくれているのでびっくりです。この 舞踏会には「笑うセールスマン」のよう な顔立ちのルーグナー氏が、毎年ハリウ ッドスター等有名人を招待してくれるこ とでもお馴染みです。パメラ・アンダー ソンやソフィア・ローレンの時はマスコ ミがとても騒いだようですが、今年は招 待したゲスト(元スパイス・ガールスの 一人)のインタビューもなくルーグナー 氏の影が薄かったようです。

  日本人の話題としては、この Opernball に今年はなんと関西TV局が男女二組の デビュタントを連れてきていました。日 本も社交舞踏会ブーム到来となるのでしょ うか? 大阪市では三年前の成人式に「 オーパンバル in Japan 」を企画しました が好評で今年も開催となりました。主催 をした関西TVは抽選でこのイベントに 参加した二カップルを本場の Opernball にご招待したわけです。華やかな舞踏会 は成人する喜びのセレモニーにぴったり です。四人にとって一生の思い出となっ たことでしょう。
(左写真:オペラ座舞踏会の輝かしいデビュタントさん達  正谷野泰彦、越知浩介、西田ゆりあ、平原麻衣)


「Oster Klang Wien」のポスター
ハンブルクバレエの服部有吉氏(下)

  今年は三月二七日がイースター。 Oster Klang Wien (オースタークラングウィー ン)というイースターの音楽週間が興味 深い内容です。ダニエル・ハルディング 指揮・ウィーンフィル「バッハのマタイ 受難曲」、ウィーン交響楽団、RSO ウィーン、ハンブルクバレエ、オペラ座 ではイースターのオペラ・パルシファル ( Parsifal )が上演の予定。3月の月間 プログラムはハンブルクバレエの服部有吉 氏が表紙を飾っています。音楽一族の服部 良一の孫にあたる彼は十三才で単身渡欧、 ハンブルクバレエスクールで学びました。一 六二cmという身長が災いし、なかなか認め られなかったのですが、ハンブルクバレエの ジョン・ノイマイヤーが彼の才能を見いだし 同バレエ団に入籍しました。(バレエ界、 どうしてもバレリーナをリフトしたりする ので、自分より大きなダンサーをパートー ナーに選びますよね。ただでさえ大柄な女 性が増えてますから…大変!)服部氏は振 付の才能にも恵まれ、ハンブルクではソリ ストの一人として活躍中。日本では北村薫の 同名小説を原作に振付けたミステリーバレエ 「盤上の敵」も話題になりました。今回のハ ン ブ ル ク バ レ エ は シ ュ ー ベ ル ト の 「 冬 の 旅 」、RSOウィーンが音楽を担当します。 イースターと同時にサマータイムが開始され ますが、いい加減に「冬の旅」を終えたいも のです。(三月十日   記)

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パプリカ通信2005年4月号掲載