一方、難民申請をした人の数がハンガリーよりもさらに少ない国もある。スロヴァキア（２６０人）、チェコ（１８５人）、ポルトガル（９５人）、バルト三国等である。（統計：Eurostat）この数字は何を物語るのだろうか？ ２月１９日に、ハンガリーに住む、主にアフガニスタンの難民約５０人がブダペシュトで抗議集会を開いた。昨年の秋にも同様の集会が開かれた。難民達は「我々は、受ける権利がある支援を受けていない！」「ハンガリーの難民支援制度は非現実的だ」と訴え続けてきた。昨年は国会議事堂前で抗議が行なわれた。抗議を受けて、ハンガリー政府は難民支援制度を一部修正したが、新制度も難民が納得できるものでは無かった。そして難民達は、先週、今度はブダペシュトにある欧州委員会の建物の前でデモを行ない、欧州委員会に助けを求めた。委員会は、難民達の請願書を受け取った。その成果がどうでるのか、今後に注目しよう。 国連の難民問題を扱う機関であるＵＮＨＣＲ（国連難民高等弁務官事務所）が昨年４月に発表した調査結果によると、ハンガリーでは難民に対する支援や情報の提供が滞っており、多くの難民は困難な生活を強いられていて、「行き場が無い」状態であるという。待遇改善を求めてハンガリーから他のＥＵ加盟国に移動する難民が非常に多い。しかし彼等には、更なる困難が待ちうけている。現在のＥＵの制度では、ＥＵの市民権を取得しない限り、難民には、ＥＵ圏内で最初に難民登録をした国以外での就業と居住は認められていない。依って、ハンガリーで難民登録をした後に国外へ移動した人々は、国外で検問を受けるとハンガリーへ強制送還される構造になっている。そしてハンガリーへ送還されると、国外へ移動した事を理由に、ハンガリー政府は難民への手当てを打ち切るのである。このような中、数多くの難民が路上生活を余儀なくされている。 ハンガリーの大手報道機関である「週刊世界経済」誌（hvg）は、ハンガリー政府の難民支援制度には「無理な」項目が多いと指摘している。その一例を挙げよう。

税金が高いハンガリーでは、住宅の貸借の際に正式な契約が交わされない例も多い。しかしハンガリー政府が難民に対して住宅手当を配給する条件としては、正式な賃貸借契約書の提出が義務付けられている。アフガニスタンやイラクからの難民はそもそも人種的・宗教的な理由で住居を確保するのが容易ではない。正式な賃貸借契約書を交わすことは、さらに難しい。 （hvg誌はこう指摘するが、フランスやイタリア、イギリス等でも同様である。日本でも「外国人お断り」の物件が少なくない。） 更に、住宅手当を受けるもう一つの条件として、難民は、雇用契約書など、安定した収入を証明する書類を提示しなければならない。家賃を継続して支払う能力を証明するためである。しかし、―これが「無理な」制度と指摘される所以であるが― 家賃の支払いが可能なほどの経済力を持つ人は、政府の支援対象から除外されるのである。 要するに、ハンガリー政府の制度によると、ハンガリー人でさえ容易ではない正式な賃貸借契約を交わした書類を有し、家賃を支払うだけの「安定した」収入を得ており、なおかつその収入がハンガリー人の平均月給の4分の１に満たない４２７５０フォリント以下の人だけが、手当てを受ける対象となるのである。これまで、政府から住宅手当を受けたことがある難民はほぼ皆無といわれる。

昨年以来、hvg誌は国内の難民問題を積極的に取り上げてきた。「人民の自由」紙（Népszabadság）も、難民問題を扱った記事をいくつか掲載している。保守系とされる「ハンガリー新聞」紙（Magyar Hírlap）や「ハンガリー国民」紙（Magyar Nemzet）には、最近国内で起きている難民問題はあまり取り上げられていない。その代わりに、イギリスやフランス、またはハンガリー近隣諸国で起きている難民に関する記事が多く掲載されている。

「人民の自由」紙には、社会調査機関であるタールキ社（TÁRKI）が今年の１月に発表した調査結果が掲載されている。それによると、ハンガリーの成人で、難民の受け入れに積極的なのは、１０人中１人であり、１０人中４人は「ハンガリーに難民は一人も足を踏み入れるべきではない」と言い、残りの５人は明確な答えを出さなかったそうだ。 難民の受け入れや支援に対する国家制度や民衆の意見は、国の経済情勢や外交関係などによって変化しやすい。例えば日本では、カンボディア支援に対しては、国内世論の大きな支持を背景にPKO部隊の派遣や復興支援が推進され、国際的な評価も国内支持も高かった。それに対して、２０１２年のアフガニスタン和平では、日本外交の貢献に対して国際的な評価は高かったのに、東日本大震災と重なって、国内の支持が後退した面があった。

現在のハンガリーは難民支援に積極的とは言えないようだ。一方、一部の国々では、難民や移民を受け入れることで社会の活性化を図っている例もある。難民・移民には、祖国でジャーナリストや社会活動のリーダー、企業の経営者等として活躍していた優秀な人材が多い。彼等を積極的に受け入れることは、社会の発展につながるとの見方もあるのだ。

現代社会をみまわすと、国際的に活躍している中にはハンガリー系の人材が多いことに気づかざるをえない。全民族人口と比べて、国際的なハンガリー系人材の貢献や成功は、まさに目をみはるものがある。現代ハンガリー史をふりかえるなら、なぜこのように地球規模でハンガリー人の能力が開花しているか、その背景をここに記す必要はないであろう。混乱や紛争の時代に、難民の命が守られ、機会が提供されることの成果と美点を、ハンガリー人こそが体現しているともいえるのではないか。

難民問題は複雑なテーマである。中東や旧ユーゴスラヴィア等の人々が祖国を後にせざるを得ない現状には、他の国々にも責任があるだろう。和平のための武力介入は当然との考え方もあるが、武力介入の後には様々な後遺症が残り、難民発生もその一つである。例えば先月、マリの暫定政府との合意のもとに、武力組織の鎮圧のためフランス軍がマリ北部に武力介入したが、そのことによって多くの難民が発生している。 では、解決への道などないのだろうか？我われは何ができ、何をしたらよいのだろう？皆さまからの御意見をこれから文化センター新組織は積極的に求めて双方向の交流をめざしますが、丁度、本文を記している時に、情報が届きました。

「現在、日本は先進国の間で難民の受け入れが最も少ない国の一つであるが、１９７０年代に発生したインドシナ戦争の際には、カンボディアやベトナムなどから１万人以上の難民を受け入れた。そして、その後和平が進む祖国へ難民を帰還させるにあたっても、日本は手厚い支援を行なった。カンボディアの和平に日本が貢献した話は知られているが、その和平交渉を実務の面で支えた人物の一人が、現在の在ハンガリー日本大使である山本忠通氏である。山本氏はイラク復興支援等調整担当大使やアフガニスタン・パキスタン支援担当大使を歴任しており、和平外交と国際支援に関する幅広い知識と長年に及ぶ実績を持つ人物である。」 （資料提供：北海道大学スラブ研究センター）

本年2月26日に、北海道大学で現ハンガリー駐在日本国大使山本忠道氏の講演会が行なわれた。駐ハンガリー大使であるという理由はもちろんだが、その「平和構築と紛争後の復興および国家建設：日本の貢献」と題された講演会は、集まった専門家、市民に深い感銘をあたえるものであった。戦後、武力を放棄した日本には、平和外交の経験と実績がある。複雑な政治、経済、軍事技術や交渉といえども、その基本には透徹した知性や理念、高い志がもっとも重要であることを、この講演は教えてくれる。東欧研究者にとっては更に内在的な問いと姿勢に抵触する講演である。急ぎ、文化センターサイトに掲載するよう準備します。ご期待下さい。

☆下のハンガリー文化センターホームページでハンガリーニュースダイジェストがご覧いただけます 。

http://src-hokudai-ac.jp/hungary/tips/amulthet.html

【2】3月のコンサートスケジュール

☆ブダペスト春の音楽祭2013 3月22日～4月7日

http://www.btf.hu/btf2013/

（ハンガリー語・英語サイト有り）

【3】3月のオペラ・バレエスケジュール

※3月1日より、数年閉鎖されていたエルケル劇場が新たにオープンいたしました。

今後は、オペラ・バレエ公演は2つの会場で公演されますのでご注意ください。

オペラ ☆国立オペラ座☆ 1061 Budapest, Andrássy út 22.	☆エルケル劇場☆ 1081 Budapest, Köztársaság tér 30.
トゥーランドット／プッチーニ 3月 1日（金）19:00 - 22:00 3月 3日（日）19:00 - 22:00 3月 5日（火）19:00 - 22:00 3月 9日（土）19:00 - 22:00 セルセ／ヘンデル 3月2日（土）19:00 - 22:00 エフゲニーオネーギン／チャイコフスキー 3月 6日（水）18:00 - 21:10 3月 8日（金）19:00 - 22:10 3月10日（日）11:00 - 14:10 3月12日（木）19:00 - 22:10 3月17日（日）11:00 - 14:10 3月20日（水）19:00 - 22:10 バーンク・バーン／エルケル 3月13日（水）19:00 - 22:30 3月16日（土）19:00 - 22:30 3月19日（火）19:00 - 22:30 3月23日（土）19:00 - 22:30 裸の王様／ラーンキ 3月23日（土）11:00 - 13:00 3月24日（日）11:00 - 13:00 パルジファル／ワーグナー 3月26日（火）17:00 - 22:15 3月29日（金）17:00 - 22:15 4月 1日（月）17:00 - 22:15	ドン・ジョヴァンニ／モーツァルト 3月 7日（木）18:00 - 21:00 3月 8日（金）15:00 - 18:00 3月 9日（土）11:00 - 14:00 3月10日（日）18:00 - 21:00 トゥーランドット／プッチーニ 3月14日（木）19:00 - 22:00 3月16日（土）11:00 - 14:00 3月17日（日）19:00 - 22:00 John the Valiant／カチョー 3月22日（金）19:00 - 22:10 4月4日（木）18:00 - 21:10 4月 5日（金）18:00 - 21:10 4月 6日（土）18:00 - 21:10 4月 7日（日）11:00 - 14:10 4月 7日（日）18:00 - 21:10 仮面舞踏会／ヴェルディ 3月27日（水）19:00 - 22:00 ドン・カルロ／ヴェルディ 4月11日（木）18:00 - 21:00
バレエ ☆国立オペラ座☆	バレエ ☆エルケル劇場☆
風と共に去りぬ 3月 3日（日）11:00 - 14:00 3月 7日（木）19:00 - 22:00 3月10日（日）19:00 - 22:00 3月16日（土）11:00 - 14:00 3月17日（日）19:00 - 22:00 オネーギンチャイコフスキー 3月21日（木）19:00 - 21:30 3月22日（金）19:00 - 21:30 3月24日（日）19:00 - 21:30 3月27日（水）19:00 - 21:30	Pas de trois13 3月 1日（金）19:00 - 21:00 3月 2日（土）19:00 - 21:00 Ballet Pécs 3月 3日（日）19:00 - 21:00

夏の夜の夢 4月 5日（金）19:00 - 21:45 4月 6日（土）11:00 - 13:45 4月 7日（日）19:00 - 21:45 ロミオとジュリエット 4月10日（水）18:00 - 21:05

○日本人演奏家・舞踊家公演情報

■アニマ・ムジツェ室内合奏団 井上 奈央子さん(ヴァイオリン)

①3月9日（土）19:00 オーブダ集会場

ラドシュ・フェレンツ（ピアノ）、オルシュヴァイ・エンドレ（作曲家）

曲目：モーツァルト：ピアノ協奏曲変ロ長調

オルシュヴァイ・エンドレ：Acrostichon（初演）

チケット販売：

http://obudaitarsaskor.hu/index.php?option=com_content&view=article&id=112&Itemid=182&lang=hu

②3月21日（木）19:00 ナードルテレム

ラーツ・ヨーゼフ（ヴァイオリン）、デーリ・ジュルジ（チェロ）

ウォルフ：イタリア・セレナーデ

チャイコフスキー：弦楽セレナーデ その他

■向田 成人（リスト音楽院ピアノ科在学中）

4月9日 16時開演 旧リスト音楽院大ホール

ヴェンツェル・フックス（ベルリン・フィルハーモニ管弦楽団クラリネット奏者）

曲目：シューマン：幻想小曲集 Op.73, プーランク：クラリネットソナタ

ブラームス：クラリネットソナタ1番 f-moll Op.120-1

主催：リスト音楽院

■長内 裕美（現代舞踊家）※詳細は4月号で。

日程：4月12日(金)、13日(土)

場所：Átrium Film-Színház http://www.atriumfilmszinhaz.hu

■山本 千愛さん（リスト音楽院大学院ピアノ科卒業演奏会）

4月22日（月）19:00旧リスト音楽院大ホール 入場無料

曲目：モーツァルト:ピアノソナタ第13番 変ロ長調 K.333

リスト:巡礼の年報 第2年イタリアより

ペトラルカのソネット第47、104、123番

リスト＝サン・サーンス（ホロヴィッツ編）：死の舞踏S.555 R.240

ショパン：バラード第４番 ヘ短調 作品52

バルトーク：舞踏組曲Sz.77

【4】3月のイベントスケジュール

15日 ハンガリー国立記念日

8時にコシュート広場に国旗が掲揚され様々なイベントが行なわれます。

17日 聖パトリック祭

アイルランドの守護聖人パトリックにちなんで、ブダペストでもイベントが行なわれます。

各アイリッシュレストラン・パブでは、アイルランドの朝食やギネスビールなどのサービスが

行なわれるようです。14時からは自由広場からエルジェベート広場までパレードがあります。

18日―24日 ブダペスト・レストランウィーク

ブダペスト市内３０店舗で特別メニューやＦＩＸ料金で楽しむ事ができます。

http://www.etteremhet.hu/lang/en/cities/budapest/restaurants

20日 ハンガリー・マカロンの日 午後3時～9時

アクアリウムクラブ（エルジェベート広場、ディアーク広場）

http://macaronnap.hu/

29日―4月1日 復活祭（イースター）

ハンガリー全土で、様々なイベントが開催されます。

【5】編集長ピックアップ情報

☆『東日本震災チャリティーコンサート』

3月16日（土）18:00 ナードルテレム/ Nádor-terem（住所：XIV. Ajtósi Dürer sor 3）

『東日本震災チャリティーコンサート』としてハンガリー在住の音楽家・音楽留学生の有志協力を経て東日本震災復興支援運動の一環と致しまして、チャリティーコンサートを開催いたします。会場では募金のほかにもチャリティーリストバンドなどの販売させて頂きます。また、読者のからのアイデアや販売可能なものの寄付も募集しておりますので、是非ご参加下さい。

＊募金はすべて在ハン日本大使館を通して日本赤十字社に『震災支援金』として送金させて頂きます。

ご寄付を考えていただける方は、3月10日までに proparthungary@upcmail.hu もしくは

paprika.tsushin@upcmail.hu までご連絡ください。

☆今年に入ってから間もないですが、すでに数件空き巣や盗難に邦人在住者が合われていると情報が入って

おります。在住者の皆様、戸締りやセキュリティーなど今一度お確かめになってから自己防止を心がけましょう。

パプリカ通信でも、出来る限りの情報はお伝えしていきたいと思います。

各署電話番号：警察は１０７・救急１０４・消防１０５

FŐNIX-MED Zrt ：Telefon: (+36-1) 2000-100 http://www.fonixmed.com/t_elerhetosegek （救急対応）

【6】募集/宣伝

■求人情報 業種：自動車部品卸売 職種：営業 勤務地：エステルゴム スキル：日本語ネイティブ+英語 待遇等詳細は面談にて。 連絡先：Ryowa Hungary kft. 中條屋( chujoya@ryowa.hu )

■ みどりの丘日本語補習校 講師募集！ 補習校では、小学校、中学校の国語の教員を募集しています。 土曜日の午前中、授業に取り組んで下さる熱意ある方を募集します！ TEL: 06-70-658-6345 (畑山) email: info@midorinooka.hu

■ 求職

ブダペスト市内でフルタイムの仕事を探しています。(ハンガリー語可、正社員希望)

求人情報をご存 知の方は以下、メールアドレス迄ご連絡下さい。 royal.earlgrey@yahoo.com

■貸しアパート

ブダペスト中心に近いレストラン概として有名な9区ラーデイ通りのワンルームアパート。ビル5階、30平米家具付きで一人暮らしに最適なサイズです。地下鉄駅からもほど近く、夜でも安全です。また、日本人オーナーなのでインターネット接続なども手続きもお手伝いします。

興味のある方はパプリカ通信編集部まで御連絡ください。

■貸しアパート

場所：5区 Balassi Balint utca 25.（ヤーサイマリテール、4・6トラム/２番トラムすぐそば） 間取り：日本で言う5階、セキュリティーのしっかりした家具付きフラットです。 キッチン、リビング、ハーフルーム、バスルーム（トイレ別）バスタブ・Wifiあり。 家賃：月4万円 とにかく便利な場所です。オーナーは日本人。いつでも日本語で対応可。 連絡先: asuka_nakano@hotmail.com

■売りグランドピアノ・アップライトピアノ

アップライトピアノ（15万フォリント～20万フォリント）

グランドピアノ（30万フォリント～50万フォリント）

興味のある方はパプリカ通信まで御連絡ください。

■ハンガリー語レッスン

日本語で丁寧に指導していただけます。Palfi Piroska（パルフィ・ピロシュカ）

TEL : +36-20-537-4312 E-mail : palfipiroska@gmail.com

■英語レッスン

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